スペイン短歌紀行-1 |
夕闇迫るトレドの街の全景 |
■トレド(Toledo) |
中世のたたずまいを残すトレドの街は、マドリッドから荒涼たる赤茶けた平原を南 へ70キロ、タホ河の急峻な崖に三方を囲まれた要害の丘の上にある。 |
エル・グレコ描きしマリアに魅せられて見果てぬ夢のスペイン彷徨う |
Bajo la seducción de un cuadro de la Virgen María del Greco, persigo una quimera a través de España. |
すずやかなマリアの声に誘われて夏日に燃えるトレドに浮遊す |
Invitado por el susurro refrescante de la voz de María, flotando en los ardientes días del verano toledano. |
このトレドは、エル・グレコの有名な絵によっても知られ、多くの文明が栄えた 歴史的な街であり、今日まで中世の街が完全に残されている。 |
タホ河はトレドの街を守りぬく緑の流れ幾百年も |
Desde el alba de los tiempos la verde corriente del Tajo guardián toledano. (Río Tajo) |
この丘でグレコは描く我は詠むトレドの街は今日も変わらず |
En esta colina pinta el Greco, y yo componiendo. Toledo, hoy también, sin cambios. (Contemplando la ciudad de Toledo) |
イスラム、ユダヤ、そしてキリストの三文化は見事に融合し平和で独特な文化の 華を咲かせた。 ユダヤ人街は一種独特で趣のある地域である。 |
歩くたび袋小路に迷い込むユダヤの街は摩訶不思議なり |
Cosa extraña. Cuando paseo por la Judería siempre me pierdo. (Barrio Judío) |
夕日の染まりゆくトレドの街を、タホ河を挟んだ対岸の高台に立ちながら眺める。 中世にタイムスリップしたような悠久の時の流れを楽しむ。 |
ラマンチャの地平にしずむ赤き陽にトレドの街は吸いこまれゆく |
Toledo se esfuma. |
■チンチョン(Chinchón) |
マドリードから車で1時間、スペインの古い田舎がそのまま残されている村、それ がチンチョンである。 歴史を感じさせる佇まいの家々に囲まれた広場が村の中心になっている。 丘の 上には、小さな城が廃墟となって荒れたままの姿をさらけだしていた。 |
夕闇のチンチョン村は音もなしくずれし古城影絵となりぬ |
A la caida de la tarde, silencioso, con su castillo medio derruido, Chinchón se convierte en una sombra chinesca. (Castillo) |
たまたま村の夏祭りということで、村の広場に闘牛場が作られ、闘牛が行われて いた。 |
中世の村の広場はよみがえりオーレオーレと闘牛にわく |
La plaza del pueblo medieval, con la presencia del toro, hierve en olés. ( Fiesta veraniega) |
祭りの最大の呼び物である牛追い(というより 牛追われ?)が早朝に催された。 牛に追われ逃げ惑う村人は真剣そのものであった。 |
お祭りで牛に追われし村人の恐怖の顔が目前をすぐ |
Pasan ante los ojos , el miedo pintado en el rostro, las gentes del pueblo, perseguidas por el toro festivo. |
いよいよこの中世の村にも別れを告げる時がきた。 最後の晩にそぞろ歩きを楽 しんでいたところ・・・ |
中世の村のはずれに忽然と現代風のカフェバー現る |
このカフェバーで、この村の特産物である独特の芳香のあるアニス酒をじっくりと 味わった。 |
アディオース!中世の村チンチョンよ名酒アニスの香りを残し |
■アランフェス(ARAJUEZ) |
チンチョン村から車で40分、殺伐とした荒野が続くカスティーリャ中央部にありなが ら、タホ川の恵を受けて緑が生い茂り、美しい姿を見せている。 タホ川沿いの 離宮とその庭園は、優雅な雰囲気を漂わせていた。 |
タホ川の恵を受けしアランフェス水辺の離宮緑に浮かぶ |
Bañado por la riqueza que Tajo le ofrece, Aranjuez. El Palacio Real flota en las orillas verdes de la corriente. ( Palacio Real orilla del Tajo) |
■プラド美術館/マドリッド(MADRID) |
念願のゴヤの絵画を心ゆくまで鑑賞する。中でも<裸のマハ>と<着衣のマハ> の前に立った時は、言うに言われぬ気持ちであった。 |
目の前の裸のマハに魅入り居るゴヤの描けし謎の貴婦人 |
Goya pintó la dama misteriosa. Ante los ojos, admirado, la Maja Desnuda. |
謎めいた裸のマハに見つめられ気恥ずかしくて踵をかえす |
Misteriosa, la Maja Desnuda me observa. Avergonzado, vuelvo sobre mis pasos. |
■タブラオ・フラメンコ/マドリッド |
夜10時から始まったショーは明け方まで続き、その迫力には圧倒された。 |
床を蹴る白き足首踊り子の眉間にしわが刻まれゆきぬ
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踊り子のひかる額に汗が浮く乾いたステップ激しさをます |
Sobre la frente brillante
de la bailaora una fuente de sudor. El seco retumbar del zapateado acelera su ritmo. |
■パラドール・プールサイド |
灼熱の太陽がラ・マンチャの地平線に沈みし頃、プールサイドではとりどりの肌の 色をしたうら若き女性達がトップレスの裸身をさらし、水中では人魚の如く泳ぎ戯れ ていた。 |
白い裸身は..、 |
弧を描き少女の裸身は水中に羞恥の色さえ碧に溶けたり |
La joven pinta un arco con su cuerpo desnudo. Dentro del agua hasta el color de su vergüenza se difumina en añil. |
小麦色の裸身は..、 |
褐色の裸身躍りぬ濡れひかる少女の眼差し雌豹の如く |
La mirada, joven desnuda, saltarina piel morena, es ya, húmeda de perlas, de florida mujer bella. |
そして 豊かな胸が..、 |
豊潤な乳房が揺れて迫りくる白き双房に水滴ひかる |
Lujurioso y bamboleante se acerca. Sobre la pomorosa albura Lujurioso y bamboleante se acerca. Sobre la pomorosa albura |