『ドン・キホーテ』を詠む　 『Don Quijote de la Mancha』

＜４．街道宿を立ち出でてから、キホーテに降ってわいたこと＞ LO QUE SUCEDIO A DON QUIJOTE CUANDO SALIÓ DE LA VENTA

＊ キホーテは 　　　　街道宿を発ちし後 　　　　　　旅の出需品のことを思い出しぬ 　　　　　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　al salir de la venta 　　　　　　　　recordó la cosas necesarias 　　　　　　　　para su viaje. 81 　＊ キホーテは 　　　　己が家に戻り品々を 　　　　　　調えんと決心したり 　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　decidió volver a casa 　　　　　　　　y proveerse de todo 　　　　　　　　lo necesario. 82 　＊ キホーテは 　　　　近くに住みたる百姓を 　　　　　　従士に取り立てようと考えぬ 　　　　　　　　Don Quijote pensó 　　　　　　　　tomar a un labrador vecino 　　　　　　　　como escudero. 83 　＊ キホーテが 　　　　ロシナンテを村の方へ向けたれば 　　　　　　　えたりゃおゝ と駆けだしぬ 　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　dirigió a Rocinante 　　　　　　　　hacia el pueblo, 　　　　　　　　el caballo comenzó 　　　　　　　　a caminar de buena gana. 84 　　＊ 森の奥から 　　　　苦痛に泣く声が 　　　　　　ほそぼそと聞こえきたり 　　　　　　　　Desde el fondo 　　　　　　　　del bosque 　　　　　　　　se escuchaba 　　　　　　　　voces delicadas 　　　　　　　　lamentándose. 85 　＊ キホーテは 　　　　助けを求めいる者の 　　　　　　ふびんな声と思いたり 　　　　　　　　　　　　Don Quijote pensó 　　　　　　　　que la voz 　　　　　　　　pidiendo ayuda 　　　　　　　　era lastimosa. 86 　　＊ キホーテは 　　　　森の中の声のする方へと 　　　　　　ロシナンテを進ませぬ 　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　dirigió a Rocinante 　　　　　　　　hacia donde 　　　　　　　　se oían las voces 　　　　　　　　dentro del bosque. 87 　＊ 十五、六歳の 　　　　上半身はだかの少年が 　　　　　　　木に縛られていたり 　　　　　　　　Un joven 　　　　　　　　de unos quince años 　　　　　　　　del cuerpo arriba desnudo 　　　　　　　　estaba atado a un árbol. 88 　＊ 少年を 　　　一人の百姓が 　　　　ムチをふるいて折檻していたり 　　　　　　　　Al joven 　　　　　　　　lo golpeaba un labrador 　　　　　　　　con un cinturón de cuero. 89 　＊ 百姓は 　　　ムチを打ちつつ 　　　　叱責と教訓の言葉をくり返しぬ 　　　　　　　　　　　　El labrador 　　　　　　　　lo golpeaba con el látigo 　　　　　　　　y le reprendía 　　　　　　　　una y otra vez 　　　　　　　　y le daba consejos. 90 　＊ 少年は 　　　泣き声あげぬ 　　　“ これからは真面目に羊群を見張るよ” 　　　　　　　　　　　　　El joven 　　　　　　　　　lloraba y decía: 　　　　　　　　　“Señor, desde ahora 　　　　　　　　　cuidaré seriamente 　　　　　　　　　el hato” 91 　＊ キホーテは 　　　　声を荒げて言いぬ 　　　　“ 刃むかわれぬ者をしいたげるとは ” 　　　　　　　　　　　　　Don Quijote dijo 　　　　　　　　　con voz aireada: 　　　　　　　　　“Mal parece 　　　　　　　　　tratéis así 　　　　　　　　　a quien defenderse 　　　　　　　　　no puede” 92 　　＊“ おてまえも 　　　　　馬に乗り槍をかまえられよ 　　　　　　　それがしが相手いたそう“ 　　　　　　　　　“Tú, 　　　　　　　　　sube a tu caballo 　　　　　　　　　y toma la lanza, 　　　　　　　　　yo seré tu contrincante” 93 　＊ 百姓は 　　　　鎧兜で身を堅め 　　　　　　槍しごきいる騎士を見たり 　　　　　　　　　　　　El labrador 　　　　　　　　miró hacia el caballero, 　　　　　　　　recubierto con armadura 　　　　　　　　y con lanza en ristre. 94 　＊ 百姓は 　　　　おどおどしつつ答えたり 　　　　　“ この子は手前の雇い人なり ” 　　　　　　　　　　　　”El labrador 　　　　　　　　de manera temerosa 　　　　　　　　responde: 　　　　　　　　“Este muchacho 　　　　　　　　es mi criado” 95 　＊“ この者に 　　　　　羊群の見張りをさせとりまするが 　　　　　　　あきれた性なしにて “ 　　　　　　　　　　　　　“A este joven 　　　　　　　　　le tengo encargado 　　　　　　　　　un rebaño de ovejas 　　　　　　　　　pero es un descuidado.” 96 　　＊ “この横着者は 　　　　　毎日羊を一匹はなくして 　　　　　　　　帰りますだ＂ 　　　　 　　　　　　”Este remolón 　　　　　　　todos los días vuelve 　　　　　　　habiendo perdido 　　　　　　　una oveja.” 97 　＊“こやつの 　　　　　性なしを 横着を 　　　　　　　懲らしめているところなり＂ 　　　　　　　”Estoy castigando 　　　　　　　su descuido 　　　　　　　y remolonería.” 98 　＊“ この性なしは 　　　　　それを手前が給金を渡さん 　　　　　　　とする企みだと＂ 　　　　　　　”El muy descuidado 　　　　　　　se atreve a decir 　　　　　　　que no le pago 　　　　　　　la soldada que le debo.” 99 　　＊ ＂手前は 　　　　神様にかけて誓いますだ 　　　　　「こやつの言うことは嘘なり」” 　　　　　　　“ Yo juro ante Dios 　　　　　　　que es mentira 　　　　　　　lo que este dice. ” 100 　＊ キホーテ 　　　　怒りぬ＂わしの前で嘘とは 　　　　　　言語道断なり＂ 　　　　　　　　Don Quijote, colérico: 　　　　　　　　“Miente ante mí, 　　　　　　　　esa palabra 　　　　　　　　es imperdonable." 101 　＊“ この者に 　　　　　渡す物を渡しなされ 　　　　　　　否と申さば汝を打ちとらん “ 　　　　　　　　　　　　“Pagad al muchacho 　　　　　　　　lo que debéis, 　　　　　　　　si no 　　　　　　　　estoy por aniquilaros!” 102 　＊ “この者の 　　　　　いましめを解き放て＂ 　　　　　　　百姓はしもべの縄を解きぬ 　　　　　　　　　　　　¡Liberad al muchacho! 　　　　　　　　El labrador desató la soga 　　　　　　　　con la que ataba al criado. 103 　＊ キホーテは 　　　　しもべに主人よりもらうべき 　　　　　　　　給金はいくらかと聞きぬ 　　　　　　　　Don Quijote pregunta 　　　　　　　　cuánto debe recibir el criado 　　　　　　　　por parte del Señor. 104 　＊ キホーテは 　　　　百姓に命をなくしたくないなら 　　　　　　　金を払えと言いぬ 　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　ordena al labrador 　　　　　　　pagar lo que debe 　　　　　　　si no quiere perder la vida. 105 　＊ 百姓は 　　　言いぬ＂銭の持ち合わせがないゆえ 　　　　しもべを家まで一緒に” 　　　　　　　　　　　　Dijo el labrador: 　　　　　　　　“No tengo dinero aquí, 　　　　　　　　que venga mi criado 　　　　　　　　conmigo a casa”. 106 　　＊ 少年は 　　　叫びぬ ＂まっぴらだ ひとりになれば 　　　　おらの生き皮ひんむくぜ＂ 　　　　　　　　　　　　El muchacho gritó: 　　　　　　　　” Ni por pienso, 　　　　　　　　en cuanto me vea 　　　　　　　　solo con él 　　　　　　　　me despellejará”. 107 　＊ キホーテ 　　　　答えぬ ＂さようなことはない 　　　　　わしの言いつけに違背はすまい＂ 　　　　　　　　　　　　Don Quijote dice: 　　　　　　　　“No hará tal, 　　　　　　　　basta que yo 　　　　　　　　se lo mande”. 108 　＊ キホーテは 　　　　百姓に念をおしぬ 　　　　　＂ 給金を必ず払うのだぞ＂ 　　　　　 　 　Don Quijote 　　　　　　　　con insistencia 　　　　　　　　advierte al labrador: 　　　　　　　　“Le pagaréis sin falta”. 109 　＊ ＂給金を 　　　　払わぬときは おまえを尋ね出し 　　　　　辛き目をみせん＂ 　　　　　　　　　　　“Si no 　　　　　　　　le pagáis la soldada 　　　　　　　　os buscaré 　　　　　　　　y os lo haré 　　　　　　　　pagar caro”. 110 　＊ ＂われこそは 　　　　邪悪と無道をとりのぞく 　　　　　ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ ぞ＂ 　　　　　　　　　　　“Yo soy 　　　　　　　　Don Quijote de la Mancha, 　　　　　　　　desfacedor de agravios 　　　　　　　　y sinrazones”. 111 　＊ キホーテは 　　　　ロシナンテに鞭をあて 　　　　　　森を後にし遠のき行きぬ 　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　picó a Rocinante 　　　　　　　　con la fusta, 　　　　　　　　dejó atrás el bosquecillo 　　　　　　　　y desapareció a lo lejos. 112 　＊ キホーテの 　　　　すがた消えるや百姓は 　　　　　　またまた少年を打ち据えぬ 　　　　　　　　　　　　Cuando 　　　　　　　　Don Quijote desapareció, 　　　　　　　　el labrador 　　　　　　　　comenzó de nuevo 　　　　　　　　a golpear al muchacho. 113 　＊ 百姓は 　　　　少年を半殺しにし 　　　　　　その生き皮をむこうともしたり 　　　　　　　　El labriego 　　　　　　　　dejó al muchacho 　　　　　　　　medio muerto 　　　　　　　　y con la piel arrancada. 114 　＊ 百姓は 　　　　少年の縄を解き 　　　　　　あの騎士をさがせと追い出しぬ 　　　　　　　　El labriego 　　　　　　　　le soltó la soga 　　　　　　　　y lo dejó libre 　　　　　　　　diciéndole fuera 　　　　　　　　a buscar al caballero. 115 　＊ 少年は 　　　立ち上がり泣きつつ 　　　　騎士をさがさんと森を出てにけり 　　　　　　　　　　　　El muchacho se levantó 　　　　　　　　y llorando salió del bosque 　　　　　　　　a buscar al caballero. 116 　　＊ キホーテは 　　　　村をさして進みいれば 　　　　　　商人たちの一行に出会いぬ 　　　　　　　　Cuando Don Quijote 　　　　　　　　se dirigía a su lugar 　　　　　　　　tropezó con un tropel 　　　　　　　　de mercaderes. 117 　＊ キホーテは 　　　　商人六人 供四人 　　　　　　徒歩三人の姿を目にしぬ 　　　　　 　 　　　　　Don Quijote vio venir 　　　　　　　　seis comerciantes, 　　　　　　　　con cuatro criados 　　　　　　　　y tres mozos 　　　　　　　　a pie. 118 　＊ キホーテは 　　　　鎧ふんばり槍かいこみて 　　　　　　楯を胸高にかまえたり 　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　se afirmó en los estribos, 　　　　　　　　apretó la lanza 　　　　　　　　y llevó la adarga al pecho. 　　　　 119 　＊ キホーテは 　　　　声を張りあげ見栄をきり 　　　　　　商人連れに言いにけり 　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　levantó la voz 　　　　　　　　y con arrogancia dijo 　　　　　　　　a los comerciantes 　　　　　　　　y acompañantes. 120 　＊ “ ラ・マンチャの女帝 　　　　　ドゥル・シネア・デル・トボソは 　　　　　　　華麗なる乙女なり ＂ 　　　　　　　　“La Emperatriz de la Mancha, 　　　　　　　　Dulcinea del Toboso, 　　　　　　　　es la doncella 　　　　　　　　más hermosa del mundo” 121 　＊ ＂天下唯一の麗人と 　　　　　認めざるうちは 　　　　　　　一人もここを通さん” 　　　　　　　　　　　“Nadie pasará 　　　　　　　　hasta que admita 　　　　　　　　que es la doncella 　　　　　　　　más bella 　　　　　　　　que en el mundo exise” 122 　＊ 商人達は 　　　　馬をとめ呼ばわりている者の 　　　　　　妙な恰好を見たり 　　　　　　　　Los mercaderes 　　　　　　　　pararon sus monturas 　　　　　　　　y vieron a un tipo 　　　　　　　　vestido de forma 　　　　　　　　extraña que les gritaba. 123 　＊ 商人達は 　　　　その恰好と口上から 　　　　　　キホーテの乱心を見抜きぬ 　　　　　　　　Los mercaderes 　　　　　　　　por la figura 　　　　　　　　y las razones que decía 　　　　　　　　comprendieron 　　　　　　　　que D. Quijote estaba loco. 124 　　＊ 商人の 　　　一人が言いぬ ＂ お姫さまに 　　　　お目にかからせていただきたく＂ 　　　　　　　　　　　　Uno de los comerciantes 　　　　　　　　dijo: “Si nos mostraráis 　　　　　　　　un retrato de esta Señora....” 125 　＊ ＂お姫さまが 　　　　　おおせどおり美しき人なれば 　　　　　　　お認めいたしまする＂ 　　　　　　　　　　　“La importancia 　　　　　　　　está en admitir 　　　　　　　　que es bella 　　　　　　　　tal y como lo digo” 126 　＊ キホーテ 　　　　答えぬ＂肝要なのは 見ずして 　　　　　　信じ認め誓うことじゃ ” 　　　　　　　　　　　“Lo importante está 　　　　　　　　en que sin verla 　　　　　　　　lo habéis de creer, 　　　　　　　　admitir, afirmar y jurar”, 　　　　　　　　responde Don Quijote. 127 　＊ ＂できぬとあらば 　　　　　騎士道の掟により 　　　　　　　汝らと身供は合戦じゃ ” 　　　　　　　　　　　“Si no lo hiciérais, 　　　　　　　　por la orden de caballería 　　　　　　　　que profeso, 　　　　　　　　seréis conmigo 　　　　　　　　en descomunal batalla” 128 　＊ キホーテは 　　　　言うが早いか槍かまえ 　　　　　　勢い激しく突きかけぬ 　　　　　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　peparó la lanza 　　　　　　　　contra quien habló, 　　　　　　　　y arremetió con toda su fuerza. 129 　＊ ロシナンテ 　　　　つまづき倒れ キホーテは 　　　　　　地面をころころ ころがりぬ 　　　　　　　　　　　　Rocinante tropezó, 　　　　　　　　Don Quijote cayó en tierra 　　　　　　　　y fue un buen trozo 　　　　　　　　rodando. 130 　＊ キホーテは 　　　　起き上がらんと もがけども 　　　　　　　鎧の重みで身動きできぬ 　　　　　　　　Aunque Don Quijote 　　　　　　　　forcejeó por levantarse, 　　　　　　　　con el peso de la armadura 　　　　　　　　no podía moverse. 131 　＊ キホーテ 　　　　わめきたり＂逃ぐるな卑怯者 　　　　　　待っておれ 馬のあやまちぞ＂ 　　　　　　　　　　　　Don Quijote pugnaba 　　　　　　　　por levantarse: 　　　　　　　　“ No fuyais gente cobarde, 　　　　　　　　no por culpa mía 　　　　　　　　sino de mi caballo 　　　　　　　　estoy aquí tumbado” 132 　＊ 商人連の 　　　騾馬引きが 　　　　キホーテの空威張りに腹を立てぬ” 　　　　　　　　Uno de los mozos de mulas 　　　　　　　　se enfadó 　　　　　　　　ante la arrogancia 　　　　　　　　de Don Quijote. 133 　＊ 騾馬引きは 　　　槍をひったくり キホーテを 　　　　めちゃらくちゃらになぐりつけぬ 　　　　　　　　　　　　El mozo de mulas 　　　　　　　　quitó la lanza a Don Quijote, 　　　　　　　　la partió y lo golpeó 　　　　　　　　sin tregua. 134 　　＊ キホーテは 　　　　声をしぼりて天と地を 　　　　　　ののしり鬼神を威嚇しぬ 　　　　　　　　Don Quijote 　　　　　　　　no cerraba la boca 　　　　　　　　maldiciendo cielo y tierra 　　　　　　　　y a los malandrines 　　　　　　　　que tal le parecían. 135 　＊ 商人たちは 　　　　キホーテを道々の 　　　　　　笑いぐさにし旅をつづけぬ 　　　　　　　　　　　　Los mercaderes 　　　　　　　　siguieron su viaje 　　　　　　　　llevando que hablar 　　　　　　　　con lo ocurrido a Don Quijote. 136 　＊ キホーテは 　　　　この災難も遍歴の騎士には 　　　　　　　　　有りがちと思いたり 　　　　　　　　　　　　Don Quijote consideró 　　　　　　　　que aquella desgracia 　　　　　　　　era propia 　　　　　　　　de los caballeros andantes. 137 　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彷徨い人　中島孝夫